塾って、どこも同じ?
上智スクール(柴又) 塾長 渡辺勇治
春の新学期や、夏の夏期講習の前になると、いろいろな塾の広告が目立ちます。お子様を塾に入れようかと、考えている保護者の方は、さて、どこの塾に入れたらよいのかと、j迷われる方も多いでしょう。
チラシや、案内パンフレットを見ると、どこも良さそうに見えます。
「〇〇システムで成績を上げます。」とか、「どこどこの有名校に〇〇人合格!!」とか、セールストーク満載です。さて、どこの塾に入れたらよいのか…。
私も塾の教師を三十年以上やっていますから、チラシを見ると、どこが良い塾で、どちらがそうでないか、だいたい推測できます。しつかりした塾もありますが、はっきり、ここはもうけ主義一辺倒の塾で、こんな塾には入れてはいけない、とわかる塾があります。
良い塾が生徒数を増やしているのはわかりますが、
こんなお金儲け主義の塾なのに、生徒数も、教室数も伸ばしている塾があって、正直、 「どうして? 」と、驚くこともあります。
塾業界というのは、規模が大きいほど、社員はいかに売り上げを伸ばすか、という競争に明け暮れています。いわゆるブラック企業といわれる会社も多く、ノルマが厳しい業界でもあるので、他の業種と比べて、転職率も非常に高い業界です。
他のサービス業ならともかく、子どもを預かる教育にかかわる仕事で、売上第一主義というのはどうかとも思いますが、これが資本主義社会の現実ともいえます。
ここでは、塾を選ぶさいに、こういう塾はいけない、という例を挙げたいと思います。
企業としての、個別指導塾の営業の構造は、生徒の保護者の方から受け取る授業料と、雇っているアルバイト講師に支払うアルバイト料の差額で儲ける、という構造です。
ですから、できるだけ多くの生徒を集め、できるだけ時給の安い、できるだけ多くのアルバイトを集めて、差額≠フ総量を最大化することが塾の営業方針となっています。
とくに、大手の個別指導塾の場合、正社員の教室長の仕事は、どれだけ売り上げを増やすかです。保険の外交員と同じで、ノルマを達成できず、新規生徒を獲得できないと、上司から叱責されてしまいますから、必死です。
もちろん、学習塾も、私企業ですから、利潤追求は当然なことなのですが、こういう営業方針ばかりが、あまりに目立つ塾は、良くない塾と判断してよいと思います。
生徒が多い塾ならば、安心では、と思われる方もいると思います。こんなに生徒が集まっているのだから、きっと評判がいいからだろう、と。
しかし、数は多くても、入れ替わり が激しい塾があります。入塾者も多ければ、退塾者も多い、という塾です。退塾者が多くても、それを補う入塾者がいれば、トータルは変わらない、という計算になります。
そういう塾は1年に何度も、新聞の折り込みチラシをいれます。塾業界では、折り込みチラシの効果というのは、あまり大きくはないのですが、それでも二万枚、三万枚とまけば、 一人くらいは入ります。1年のトータルで、二十万枚、三十万枚とばらまけば、ある程度の生徒が集まります。
なかには、塾って、どこだって同じだろう、と思う人もいるからです。チラシのターゲットはそういう人たちです。
以前、私の家でも、子どもたちが高校生だったころ、W塾というところから、高校一年から、毎月のようにダイレクトメールが送られてきました。豪華な冊子の案内書です。仕事柄、こんな原価のかかる案内書を都内の生徒全員に送ったら、いったいいくらかかるだろうと、計算してみました。
一人の生徒を獲得するのに、なんと三十万円とか、四十万円もかかってしまいう計算になります。
そんな大きな経費を、どうやって回収するのでしょう。
宣伝費がかかればかかるほど、必ずどこかにしわ寄せがきます。広告はよく目に付きますが、目に見えないところで、何かごまかしがあるものです。
チラシをばんばん、新聞折込に入れたり、テレビコマーシャルを頻繁に流している塾は、それだけで信用してはいけないと思います。